十月

 

巡礼の焼きおにぎりを霧の中

秋夕焼ビル街のマラソンの流れ

コロナ過や袋の中の祭笛

入道雲端からちぎる秋の風

寝転びて蒼空の蒼と宇宙飛行士

パンの耳子雀と分け啄木忌

當の月前をよぎるは雁の列

香保里

 

竿になり鉤になり中には鳴かぬものも居て

美紗

 

雁渡るあの先頭はリーダーか

ひでみ

 

秋深し茨垣どもも雨読して

睦月二日キンカン頭の運命哉

秋熱し低頭陛下の文語体

熱田津の夏の空から九百屯

益荒男が入道雲向け飛び立てり

夏草や敗れし軛外さねば

嘴を挟んで小雀(こがら)熱り立つ

青斑

六月

 

ねぐらへ発つ雀鈴生り庭楓

ほうたるを追い掛け掛けて黄泉の国

ゆっくりと地球を直足に蝸牛

夏歌舞伎宙吊りもあり宇宙観

香保里

 

崖の上海に向かいて野菊かな

美紗

 

瀬戸の海白波立ちて春の風

ひでみ

 

朔六月第六天魔王の骸なし

梅雨ジメジメ今日は避難指示もあり

梅雨ジメリ自虐紙面も大谷カッキーン

青斑

五月

 

母の日は母偲ふて泣けテロリスト

桜流しに遊び心や傘さして

春霞手を伸ばせばその中に

花びらの莚の上の舟を漕ぐ

丸一日の梅雨音吾れは料理かな

男あり胸ポケットに白詰草

香保里

 

轉りか語り合ふてか風の声

美紗

 

八十路にて友と花見やありがたき

ひでみ

 

春飛行輩の友がしんみりと

幼き春父があれだと掩体壕

青斑

 

三月

 

透天やまくれないの牡丹の芽

寒の餅言い分膨れてパンクせり

豆撒も潜んで二月も逃げにけり

戸を操れば子雀信じて待っている

早梅や業平扇に二・三輪

冬椿白く灯りて水鏡

香保里

 

ホホケキョと幼い声で競い啼く

美紗

 

瀬戸の海光浴で断崖の梅数本

ひでみ

 

桜鯛伝馬船にはフグとベラ

軒端には桜花愛でたる猫涼と

桜花散る史実は吾子に任せたり

青斑

 

二月

 

コロナ、イフルエンザやれ今日もやり過ごす

菜の花に蝶待ち見える平和かな

菜の花やふるさと捨てて男子(おのこ)発つ

立秋風の又三郎の清姿かな

耳をすませば天の川音春隣

香保里

 

初詣天にきりりと日章旗

庭熟柿史記読み解すiPad

雀の子集いて弾む地動説

青斑

十月  (各季節から選句)

 

灯籠流し手を振っている向ふ岸

鰤起こし早よ舟戻せ雨も来る

秋は九十九里へ先ずは鎌倉の切り通し

奥道後庭の狸と秋惜しむ

早朝のいづこへ翔り黒揚羽

赤い実の灯りしままに山法師

ほととぎす人恋しくて軒の端

盆櫓女にもある喉佛

猛暑に夕月カントよかき氷はメロン蜜

盆の月お帰りなさい蛍よ

待ちて受く朝刊少年秋深し

香保里

 

九月 コロナのため各季節から選句

 

梅雨寒の葛湯を呑めば涙ぐみ

待ち人と並んで歩く春夕べ

お花見は亡夫の好きなあの土手へ

早朝のすでに仄かに山法師

大海豹浜で昼寝とは大物よ

十万億土とは遠くて戻る春の夢

楕円の西瓜孫悟空が抱え持す

猛暑二ヶ月カントよかき氷はメロン味

盆の月お帰りなさい蛍よ

灯篭流し蛍が一つ付いている

末の子に父の形見を送り盆

長月や地球儀廻しなにやかや

浴衣の袖たぐり赤い櫛賣る盆の店

香保里