2020-01-01から1年間の記事一覧

十月

天高くたっぷり使って佳い日和 さざ波てさざなみて終日鰯雲 秋夜長ねむり薬は難解書 秋風を聞けば唱歌を歌いたく 雀いて鵯来て庭の修羅場かな 中秋の主治医の笑顔指でグー 四十雀朝のおしゃべり雌雄かな 山法師誰が簪に朱玉の実 山法師ひたすら眞紅の炎あげ …

九月

店先の提灯草に蛍来よ インターネット生の言葉は月に置く 生前の話などして盆の月 木犀の角を曲がれば吾が家の灯 茎高く花屋の奥の女郎花 藁ボッチもたれて話す距離が佳い 目の端に雲泳ぎいる彼岸入(鰯雲) 名月を二十畳間へといざなへり 大羽一枚拾ひ落葉の…

八月

さてさてと豆蒔く頃や遠郭公 新芋の焼芋を買う日曜日 退職してとどの詰まりの句座なれや 山法師一片風と修行に出 新社員板に付きたる初蛙 明星にお供一星梅雨上がる 牧の柵人間(ひと)を見つめる仔馬かな かきつばた石の腰掛在原の中将 初蝉の朝は眞青な空一…

七月

動かぬ雲やはり動いて桜の秀 鏡中に卒寿なか半や花衣 出社して若衆となり四月かな あねいもうと下校待つ妹落葉松散る 点描の筆先溢るる落葉松芽 黒蝶のバサリと訪ふやブログ開く 梅雨の昼歯科にまさかの医療器具 釣り鮎呉れて串打傳授して去ねり 遅き陽や今…

六月

鳶色に深空の鳶の自信かな コロナ災世のくさぐさや春も過ぐ 夏の月吾が添ふ影と腕を組み 花万朶うおんうおんと樹の寝息 明け易き春山に呼ぶやほととぎす ほととぎす夜明けの街を袈裟がけに 夕ほととぎす尋ねしものはおらぬでか 萬緑をざぶりと洗い雨上がる …

三月

暁の庭に喇叭水仙吹きはじめ 薬石効なし打つ手はありと四月馬鹿 ひょっとこの顔して風船ふくらます 三十余亡夫の曲がりし角の梅 蕗の薹採り進みてや他家の領 婆々友とおしゃべりおれば初蝶来 「春宵一刻値千金」終わりの旅の卒寿吾 淑女にして手放し大笑いマス…

二月

大風呂敷の癖のありけり風の春 慣習を少しはずれて寒送る あさぼらけ四方に喇叭吹く水仙 物見高い狸が庭に春の宿(奥道後) 向こふ山の幽霊鉄塔や初霞 鱈にケチャップ苦労は隠居にもありて 日がな一日そこにありけり春の雲 墓山より見る甍の波の春気かな 「や…

一月

水涸れて農池に青き冬の草 ふて寝してもて余したる夜長かな 一の門過ぎれば札所の梅の坂 のこのこと烏のありく寒日向 初詣寡婦も混じりて女坂 初句会横文字入りの句が処々に 寒四郎疾風の如鳥一点 ヘラジカの抱き枕だき寒九かな 初雪ちらちら一固りの黒い雲 …