二月
大風呂敷の癖のありけり風の春
慣習を少しはずれて寒送る
あさぼらけ四方に喇叭吹く水仙
物見高い狸が庭に春の宿(奥道後)
向こふ山の幽霊鉄塔や初霞
鱈にケチャップ苦労は隠居にもありて
日がな一日そこにありけり春の雲
墓山より見る甍の波の春気かな
「やぶ鶯」と 渾名で老母喜ばす
春一番屋根に吹かるる男ゐる
鶯摺餌予備のはこべら瓶にあり
あやふやな老いに死は一定と春の夢
香保里
暗やみにあたり憚り鬼は外
食べ乍ら豆を撒いてて幾つ目ぞ
節分豆一升まこと昭和はなつかしき
美沙
明日は咲くシクラメン鉢窓に置く
待ちて咲き三日の落花白椿
瀬戸の海光浴び断崖の梅数本
ひでみ
Patriots 二・二六に父想う
青斑
一月
水涸れて農池に青き冬の草
ふて寝してもて余したる夜長かな
一の門過ぎれば札所の梅の坂
のこのこと烏のありく寒日向
初詣寡婦も混じりて女坂
初句会横文字入りの句が処々に
寒四郎疾風の如鳥一点
ヘラジカの抱き枕だき寒九かな
初雪ちらちら一固りの黒い雲
一枚の雪空の端青い空
亡夫は生涯「手套は白」と矜持なる
日々是新聞憂国婆々の寒の内
壁に並ぶ「うどん」のメニューや寒の内
香保里
正月も母の忙しく明け暮るる
こんねんも独りで搗くや餅搗機
次々とシクラメン咲く窓辺かな
ひでみ
初夢や吾は笑いて師の家に
美沙
令和パラ人と補助具の新記録
初夢や熱力単位がまた取れぬ
A hard day's night 終えて拝すや初日の出
青斑