七月 コロナのため各季節から選句

 

山法師家路の先の灯かな

山法師頭上は火星の通り路

山法師すっくと立ちて佳人住む

山法師見如に散って地の明り

お花見は亡父の匂いのステッキで

句友なるワシリー帰国梅雨の朝

香保里

 

梅雨の庭Rock ’n’ Rollと麦焼酎

皸でフラスコ洗う学徒かな

梅雨の闇桔梗が第六天魔王呑む

青斑

 

十月 新型コロナのため一年ぶりの投句   各季節から選句

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新米の握り飯なら塩結び

山法師赤い実を付け甘かりき

終わり梅雨したたか降って雨柱

人生にまさかの坂や熱中症

佗助の下向いて咲く愛らしさ

正午(ドン)と鳴ってにわかに増ゆる赤蜻蛉

山法師見事に散って地の明かり

残月や玉蜀黍畑に人がいて

横雲が横車押す暑さかな

風白し自由自在に思考して

十六夜や待つ人も無く早寝せり

秋雨来て雀早々裏山に

瓶落とし音を納めて山眠る

姉さんにさよならを云い墓の秋

袖に触る野のたをやめや吾亦紅

風涼し我れ六道をどのあたり

風に唄えば山雀が来て歌ふかな

蝶道を真っ直ぐ帰る冬の蝶

香保里

 

緊急事態ネオンに替わり六連星

「ヴァスカビルの犬」トラウマの寒夜

青斑

十月

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天高くたっぷり使って佳い日和

さざ波てさざなみて終日鰯雲

秋夜長ねむり薬は難解書

秋風を聞けば唱歌を歌いたく

雀いて鵯来て庭の修羅場かな

中秋の主治医の笑顔指でグー

四十雀朝のおしゃべり雌雄かな

山法師誰が簪に朱玉の実

山法師ひたすら眞紅の炎あげ

冬蝶の黄なを極めて地に伏せり

秋冷や僧帽筋にフード乗せ

掬はんとすれはするりと蜆蝶

香保里

 

熱汁や「今朝は寒いな」厨事

ひでみ

 

彼岸花いつもの畦に咲きほこる

秋祭コロナで自粛はさびしかり

美紗

 

吉法師稲わら腰に兵法書

墓参り二百十日鰯雲

風邪っぴきに見舞いに来たる飛行蜘蛛

青斑

九月

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店先の提灯草に蛍来よ

インターネット生の言葉は月に置く

生前の話などして盆の月

木犀の角を曲がれば吾が家の灯

茎高く花屋の奥の女郎花

藁ボッチもたれて話す距離が佳い

目の端に雲泳ぎいる彼岸入(鰯雲

名月を二十畳間へといざなへり

大羽一枚拾ひ落葉の上に置く

女郎蜘蛛囲ことはり無しに庭で猟

香保里

 

吾れのボケ如何なものかと悩む朝

日々に倦み旅に出たきとコロナ鬱

淋しいな男二人の川キャンプ

ひでみ

 

マスクして検温コロナ残暑なり

秋涼しやっと一息深呼吸

墓参り銀杏黄葉踏みしめて

美紗

 

秋祭り担ぎ手の胸に竜頭あり

面河渓一枚羽織る夏の朝

梅津寺ストローハットと云う帽子

面々々日毎の破竹夏稽古

青斑

八月

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さてさてと豆蒔く頃や遠郭公

新芋の焼芋を買う日曜日

退職してとどの詰まりの句座なれや

山法師一片風と修行に出

新社員板に付きたる初蛙

明星にお供一星梅雨上がる

牧の柵人間(ひと)を見つめる仔馬かな

かきつばた石の腰掛在原の中将

初蝉の朝は眞青な空一枚

自転車の少年洗ふや夏の雨足

香保里

 

挨拶は「今日は寒いな」寒い梅雨

ひでみ

 

雨に咲く濃紫陽花に気をもらふ

梅雨寒くコロナウイルス蔓延す

ホホケキョと幼い声で競い啼く

美紗

 

梅雨に入る季狂い豪雨家流す

梅雨晴れの熟田津に立つペトリコール

青斑

七月

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動かぬ雲やはり動いて桜の秀

鏡中に卒寿なか半や花衣

出社して若衆となり四月かな

あねいもうと下校待つ妹落葉松散る

点描の筆先溢るる落葉松芽

黒蝶のバサリと訪ふやブログ開く

梅雨の昼歯科にまさかの医療器具

釣り鮎呉れて串打傳授して去ねり

遅き陽や今日一日の礼を言う

浴衣着て若き背丈の立居かな

香保里

 

雨に咲く濃紫陽に気をもらふ

春寒しコロナウィルス蔓延す

ホホケキョと幼い声で競い啼く

美沙

 

挨拶は「今日は寒いな」春寒し

ひでみ

 

コロナ禍の休場球児の目に涙

青斑

六月

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鳶色に深空の鳶の自信かな

コロナ災世のくさぐさや春も過ぐ

夏の月吾が添ふ影と腕を組み

花万朶うおんうおんと樹の寝息

明け易き春山に呼ぶやほととぎす

ほととぎす夜明けの街を袈裟がけに

夕ほととぎす尋ねしものはおらぬでか

萬緑をざぶりと洗い雨上がる

雲一つそれより白き山法師

花茎の天に捧ぐや山法師

香保里

 

すくすくと芽立ち早く追ひつかず

美沙

 

ことさらにコーヒーの香や夏の朝

ひでみ

 

惜春の書架に手を延べ哲学書

青斑